episode 5

晩酌はしない

今はもう亡くなってしまったKさん、、、親愛なるジジだ。身よりもなく一人暮らし。病名は高血圧に心臓、脳梗塞もあった。私が外来の受付をしていると必ずむこうから笑顔で声をかけてくれる

「おはよう、毎日暑いね〜」
「今日は○○くんが受付か、大変だね〜」

慣れない受付業務に戦々恐々としていた頃なので、もう10年以上昔のことになる。その頃の受付に立つ私といえば、患者さんに文句を言われるばかりだったから、これにはずいぶん救われた

そんなKさんの大好きなのはお酒。一人暮らしの気楽さ、、、いや寂しさをまぎらわせる為か、お酒が手ばなせない。何度かKさんのお宅に出かけていったことがある、、、、

凄まじい

布団は引きっぱなし、布団の周りには衣類をはじめ鍋や茶碗が散らばっている。そして酒瓶がゴロゴロ、、、ん、んん、Kさんお酒は止められてるでしょ。そう言うとニコニコ笑って頭をゴシゴシこすって舌をだす、、、カワイイんだこれが

話は逸れるがKさんの家の防犯対策は完璧だ。Kさんは昔、大工さんだったんだヨ。まず窓はすべて内側からのねじ込み式の鍵。ガラスは入ってない(^^;木の板、そう雨戸がそのまま窓なんですね
そして秀逸なのが玄関の引き戸。どこから見ても鍵らしいものが付いてない。内側から見てもそれらしいものがない。ん?どういうこと?でもちゃんと戸は閉じられる

目が点

戸板の枠に木目にあわせた木釘がを突っ込んであるのだ。だから外からも内からもその存在は全くわからない、継ぎ目を良く探せばわかるけどもネ。では開けるときにはどうするか、木釘にあわせた棒で押し込むんです。そうすると木釘は反対側に落ちて、鍵がはずれるという仕組み、、、完璧!

もっともKさんの家に金目のものはナイ

話がそれてしまった。そんな彼の家で聞かされた衝撃的事実!何度か入退院を繰り返すうち、すっかり弱ってしまったKさんだが、それでも茶目っ気は消えることがない
主治医の医師にはきっぱりと禁酒を言い渡されたKさんだが、Kさんは嘘つきじゃない、命を何度も救ってくれた先生に嘘はつかない。「あの先生には恩義がある、言われたことは必ず守る」とのこと。診察時に、先生はKさんに必ず聞くそうだ「Kさん晩酌はだめよ?」と

「晩酌はしてない!」ときっぱりと答えるんだって

 

朝起きて五合、昼寝の前に五合

だから晩酌はしてないそうだ・・・先生!朝から五合飲んで来る患者の事ぐらい気付いてヨ

 

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