episode 9

私はだれ?ここは病院

うちの病院では送迎バスを巡回させている。病院の所在地が郊外であり公共の交通機関が近くにはない。駐車場は多めにとれるが、高齢の方にはあまり意味がない。そこで無料の送迎バスを運行している

利用者はほとんどババだ

そもそも病院に来る高齢者はババが多い。なぜだろう?若い方の場合は男女差はあまりないように思うのだが、老人はババばかりだ。一度調べてみる価値はあるな、、、確かに女性の平均寿命のは長い、同年齢での生存率も当然女性の方が多い、、、来院者の男女比を調べると7:3くらいになるのではなかろうか

バス一杯のババが送り届けられてくる

それを待ち受ける受付者。正面にバスが止まる。緊張が走る。左右を伺いながら一人、また一人と降り立つババ達。まるで上陸用舟艇から降りたつ海兵隊員のようだ。口々に奇声を発し、手にもつ杖を振り回し、、、中には輝く金属製の杖を持つものもいる、、、緊張が走る戦慄の光景

一兵たりとも上陸させぬ!ここは死守するゾ、、、

いや、患者さんだ。こうして日々死闘が繰り広げられる。皆常連さん達、こちらも顔を見ればだいたいの対応はわかっている。AさんはS先生の患者さん、BさんはY先生、Cさんは整形へ、、、そんな中にK婆さんの姿があった

「どうされました?今日はどうなさいますか?」
「・・・」
「整形外科ですか?」
「・・・」

沈黙が流れる。Kさんは怪訝そうにこちらを見据えている
胸中に不安がよぎる

(??どうしたんだ、何か間違った事を言ったか?応対がまずかったか?いやなにも失敗はないはずだ、、、服装がまずいのか?Kさんって耳が遠かったっけ?よしもういちど、ゆっくりとダ!)

「今日は、どうされました?」
「・・・」

沈黙

Kさんは相変わらず怪訝そう、目尻が下がる、にたりと笑う、そして彼女の口から語られた言葉は・・・

「私、なにをしにきたの?」
「ん?」

なにをしに来たか?それはこっちが聞きたい!

「家で洗濯物を干していたんだわ、そしたら病院のバスが走ってくるのが見えたのよ、で、慌てて飛び乗ったんだわ・・・
・・・で?私なにをしに来たのかね?ねー、ねー」

パブロフの犬

 

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