episode 12

燃えるゴミの日

もっぱらババを敵視してきた。それでも全てのババが扱いにくいわけでは決してない。通院のたびにお花を持ってきてくれる人、受付に必ず「元気ー?」と声をかけてくれる人、孫娘のダンナにと縁談話を持ってくる人、、、

余計なお世話じゃ!

何か持ってくる人だけが、嬉しいわけじゃない。可愛らしいババというのはありです。90度に腰を折り、手押し車を押しながら、ニコニコ笑顔で近づいてくる姿。思わず微笑んでしまう。またキリリと和服姿で来るお婆さんの姿もまた気持ちのいいもの。もっとも診察に和服は機能的ではないんですが

Uばあさんも和服で来る1人。ただ、、、少しもキリリとしていない。どこか、、、いや全体的に着崩れていて、それでいて見苦しいかといえばそうでなく、どこか微笑ましかったりする。そういう身なりなのだが、その日は更に着崩れていた、、、

裾ははだけ、帯もなんだか変なまき方になっている。怪訝そうに見ていたら、Uさんと視線があってしまった。微笑ましいとはいえ、あまり関わりたくない存在のUさん。できるだけ目を合わせないようにしているのに・・・その日の姿に目を向けざるを得なかった、、、

Uさんは両袖を交互に持ち上げ

クンクン、クンクン、、、

さかんに自分の着物の匂いを嗅いでいる。そして受付カウンター越しに聞いてきた

「クン、クン、、匂う?私臭い?ん?クンクン、、、」
「え?いやぁ別に大丈夫ですけど」

クンクン、クンクン、クンクン・・・

今度は裾をたくし上げて匂いを嗅ぐ

「Uさん、大丈夫ですヨ、どうしたんですか?」

ククク・・・

私の背中に悪寒が走る、今度は突然笑いだしたのだ!
Uさんは、もう我慢できないかのようにしゃべりだした

「朝、病院へくる途中の道で、急に腹が痛くなった。それでどうしても我慢できなくなってね、持っていた買い物のビニール袋にね、、、しちゃったの、、」

しちゃった?って

「え?なに?なにしちゃったの?」
よせばいいのに、聞いてしまった私

「う○こ!」

「う○こ、しちゃったの、、、いやー!溢れるかと、冷や冷やしたわー、大丈夫だったと思うんだけど、、、」

クンクン、クンクン、クンクン・・・

「ねぇ、臭う?私、臭う?クンクン・・・」
「いえ、臭いませんけど、、、」

まさか!それを持って、、、しかしUさんの手にそれらしいものは無い

「でさ、今日は燃えるゴミの日だ。ちょうどゴミ置き場があったんで、、、」

「出してきた」

燃えるのか〜?水分きってないけど

ゴミ収集作業員の方に合掌

 

BACK MENU NEXT