episode 45

真夜中の訪問者

ある夜、僕は当直をしていた。電話が入る

「目眩(めまい)の薬入ってない」
「どうすればいいの」
「今日薬貰えなかった」

なんだ?なんだ?うん、まーね。この声の持ち主は良ーく、わかってるんだけどね。ほら、以前トップページを飾ったK親子。あの娘のほうなんだナ。電話をとったとたん、いきなり喋はじめるんだ・・・

「どうすりゃいいがけ?」

こっちこそどうすればいいんだろ? 「今日、薬を貰えなかった」というケドさ 、今日はKさん、めずらしく病院に来てないんだよネ

「アンタ?いつもの事務員さんでしょ?」
「どうしてくれる、るるるる・・◎・△$#?」
「薬がないんだから、どうしてくれるのーーー○#$□?」

『違います!当直のものです』

そういうアンタは『Kさんでしょ』。わかってるけどさ、口が裂けても言えませんヨ
後がコワイし長いんだから・・・
ここは宿直者のフリをして何もしらないコトにしておこう
なんて考えている間にもKさんのしゃべりはとまらないんだけどサ

「なんで薬入っていないのよ、のよ、のよー」(エコー)

よくよく聞くと・・・母親のことらしいんだよ
1)今日、近くの○○医院に行った
2)目眩を診てもらった
3)薬袋の中にいつもの目眩の薬が入っていない
母親が他所の医院で貰ったクスリの苦情?症状は目眩がひどくてとても

起きていられない

のが一番ツライ!そうで、、、
今、時刻は22:00なんだよ
だったら

寝てろよ

他に症状は?たとえば「吐き気」「熱発」「頭痛」はないのか確認したら

ない!

と即答されちゃうし、ムムム・・・相変わらず手強いよネ。この夜更けに目眩がして、母が「起きていられない・・・」と電話してくるんだモン!
さっきから電話のバックにはBGMがガンガン!ながれているんだけどサ、これが・・・

ワーグナー

ぐ。今にもヘリコプターで襲来しそうだナ、、、
ワーグナーを大音量でかけながら、母が眠れないとは・・・
こちらが『いつもの受付』の人間と悟られては絶対にいけない
私は当直者なのだ、ただの当直者、部外者だ・・・
初対面の人間のフリをするゾ
医療についてはまったくのド素人の警備員のフリをすることに・・・

『どうしましょうか?』
『どうされます?』
『様子見られたらどうでしょう?』

反撃の3連答!どうだぐうの音もでまい!
相手は、しばし無言に・・・

しめた!

あの人間拡声器、歩く街宣車、その娘が沈黙した
正直、勝利を確信した。受話器の向こうではワーグナーがいよいよ佳境に入ったようだ・・・

「なら様子みて寝させるわ」

やった!勝利!万歳!マンセー!

夜明けは遠い・・・(つづく)

 

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