episode 49

眠れない夜・・・長い当直の夜

Tさん80歳

夜8時半、QQ隊より電話・・・妙に丁寧、というより下手に出てくる。いつもはタカピシャなヤツラがいつになく腰が低い

「夜分にすいません・・・」

と、申しわけなさそうに訪ねてくるんだよ。内容はというと、今日そちらに受診されたTさんという方が、薬を飲んだら意識低下を起こしたとのこと。投薬内容を教えてもらえないか・・・

「・・・夕食後8時ごろからぐったりしてしまって、布団のなかに入ったまま動かなくなったそうなんですー・・・」

その日当直だった僕は、一瞬、投薬ミス?かと思い。受話器を強く耳に押し付けた。しかし、どうやら違うらしい、、、ちっとも慌ててないんだよヤツら

ヲマケに最後には消え入りそうな声になって、、、 ヤな予感!
救急隊員が下出にでるときはロクな事がないんだよね。酔っ払い、行き倒れ、シンナー中毒なんてのもあったナ・・・

とはいえ状況をたずねる。奥さんの通報で出動したそうで、奥さんが言うには、旦那が夕食後の薬を飲んでからバタリと倒れてしまったと・・・

「寝ているだけのようなんですがぁ」

とは救急隊員さんの弁。さらに、Tさん宅には3日前にも呼ばれており、その時も意識低下の訴え。その時は日赤に搬送したんだってっさ。そして

何ともない

ということで、すぐ帰されて来たらしい

「今の状態は、バイタルは正常。呼びかけにも反応します。ま、それでも起きることはないんですが、、、

ちょっと奥さんがヒートアップしてらしゃってるもんで・・・」

うむむ、仕方ないか。今日ウチに受診してる患者さんだしなぁ。とりあえず受け入れるしかないだろう・・・飲んだと思われる薬を持ってきてもらうことにして受け入れた

間もなく到着。ストレッチャーの上のTさんは口を半開き、救急処置室のライトが眩しいらしく、目をギュっとつむっているようで、それでいて健やかな・・・目もと。時折絞り出されてくる声はというと・・・

ZZZ・・・

「Tさん!」と呼びかけると

「ぅあーん、、、」

眼は開かないが返事はする。もう一度大きな声で
「Tさん、わかります?」と呼びかける

「ぁあ」

呼びかけには反応している

奥さんは足が悪いため同乗してこなかった。仕方がない救急隊が持参した薬袋を調べてみると・・・確かに、今日の午前中に貰ったばかりの薬。ほとんどが手付かず

昼食後に飲む薬・・・
夕食後に飲む薬・・・

ともにDM(糖尿病)、UV(胃潰瘍)の薬である。どちらの薬も何年も飲みつづけている薬で、間違えられるような薬ではない。DMの薬もあったので低血糖発作も疑われたが・・・

飲まれてない

そして、、、寝る前の薬

グラマリール 1T
レスリン 1T
ロヒプノール 1T
ハルシオン 1T

飲まれているようだ

『寝る前の薬』と薬袋には大字で書かれてあり、別包にされているのだが、丁度、1包分封が切られている・・・

「Tさん!コレ飲んだの?」

「あーん、、、」

Tさんに何度呼びかけても起きない。起きないよナーこれだけ飲めば・・・なんと言っても至れり尽くせりの

豪華ラインナップ

羨ましいかぎり!
奥さんのことを考えると、このまま返すわけにもいかず。とりあえず入院

静かな秋の夜は、虫の音が遠くから響くだけでとても静か。病院の待合室の中のどこかにもコオロギがいるのか、先程からコロコロと一際大きく響いてくる。秋の夜長に静かにすぎゆく当直の夜は、先ほどの喧燥が嘘のように静まり返り・・・あっというまに朝が来た

「なんでこんなところにいるんダーッ!!」

翌朝スッキリ目覚めたKさんの 怒声が

病院中に響き渡った・・・

今日は朝早くに用事があって昨日は早めに寝たそうで・・・

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