episode 54臨死体験−いとしのSさん(3)ウチには喘息の患者さんが多い。今では昔ほど多くはなくなったが、発作を起こし、真っ白な顔に、ヒューヒュー音を響かせ、駆けつける人も多かった。その苦しさといえば尋常ではない様子 喘息の発作で何度もやってくるUさんは、呼吸も止まることも度々で、僕が本人に聞いたところでも5、6回は 「アッチ側」へ行ってきたそうだ。「アッチ側」の様子を詳細に憶えているとのこと、、、 アア吃驚!だったそうだが、2度、3度、、、とアッチヘ行くうちに、慣れたそうで。向こうから手招きするヤツラともすっかり顔なじみになったそうで、絶対!行かないよ、僕は・・・ と言うのだが、今まさに発作状態全開で、ヒューヒュー息を継ぎ、喘ぐようにしながらも、笑顔で語って聞かせてくれるUさんだった。なにも発作が起きてる今、診察前に、そんな話をしないでもいいのに、、、といつも思った。発作の苦しさにも慣れてしまっているのだろうか・・・ そもそもUさんの自宅は、当院からはけっして近いわけではなかった。車で40分以上かかるところ。夜中に発作が起きると自分で車を運転してくるのだが、、、 そんな時に、帰ってくる返事が上記のとおりで、何度も「アッチ側」へ行っても帰ってきた俺だから、というふうなのだ。そして大発作に喘ぎながら、、、Uさん自身はいつも笑顔で語っていた。本人にはとってはこれくらいの発作ぐらい・・・ということらしいのだが、そうこうしてるうちに心臓は止まっていたりして・・・ そのUさんも数年前に「アッチ側」へ行ったきりに、、、存命であれば今年で50歳。ある晩に喘息の大発作に襲われ、さすがにその時の苦しさは違ったのか、救急車を呼び、近くの救急外来に搬送されたのだが、あいにくとその晩、その病院には救急車が何台も殺到していて・・・ その救急車の行列に並ぶうちに車内で息をひきとった・・・初めての病院でも、彼はやはり笑顔で語っていたんだろうか・・・今でも時に思い出してしまう もひとつ うちの職員のFさんも喘息をもつ、そしてその妻は看護師。ある日曜日のこと、日直に忙しく走り回る妻のもとに旦那のFさんから数度にわたる電話が・・・ 凄く苦しいとの電話らしい。休みの日の病院は医師も看護師も事務だって、限られた数で走り回っている。看護師である妻の忙しさは尋常でない。夫からの苦しいという電話にも「今、忙しいから!もう少し我慢して」という返事を繰り返すばかり、、、 心停止状態もう無我夢中で車に放り込み、蘇生を試みながら 右手にハンドル!
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