episode 55

絶体絶命−いとしのSさん(4)

さて心臓の持病を持ちながら、今日も一生懸命働くS事務長。何度も倒れそうになりつつ、、、実際に倒れた。それでも健気に今日までやってこれたのは・・・

診療所の雰囲気がとても「家庭的」だからだろう。患者さんとのやりとりだけでなく、職員同士のやりとりもとてもアットホーム。限られた職員数で、その地域の医療を請け負うのだから、自然と結びつきは強まっていくのだろう

職員数が少ないから、自然に誰もがサポートしあう関係が出来上がっている

「私の仕事は事務だから」
「私は看護師だから」

などとは決して言わない。忙しい時には、お互いが、何も言わずとも、一丸となって、、、

阿・吽

の呼吸で分かり合い、互いにフォローに入り、患者第一で全員で支えあう雰囲気が貫徹しているらしい・・・病院だと、ややもすると職場単位で張り合うことが多いのに、それはずいぶんとうらやましい話に聞こえる。もっとも、そんなに気がまわるわけではない僕には、決して勤まらないだろう

これはそんな診療所のある事務員の体験談である

そんな診療所のある日

今日も外来は忙しい!全ての職員がフル回転。誰が一人欠けても回らないのだ。みんな全力投球で走り回っている

しかし先ほどから妙に忙しい。いつもの倍は働いているような気がする。そう感じているのは私だけではないらしい、看護師の○○さんも

『忙しいよね・・・』

目で同意を求めてくる。確かにそうなんだけど、答えるまもなく次から次へと患者が来る、カルテを出して、診察室に届け、計算もして、会計もしなきゃならない。目の前の患者さんに全力投球するしかない

「アレ、S事務長は?」

ちょっと落ち着いた時に看護師の○○さんが尋ねてきた。あれ?そういえば姿を見かけない。またどこでサボってるのか、もしや・・・また

倒れているのか?

すると、静かになった診療所のどこかから

「ォーィ・・・」

ん?どこかで声がする。何だろう?

「ォォーィ・・・」

確かに。今にも消え入りそうな声がする

「・・・タスケテ」

あぁ?どこだ?どこからか声がするのだけれど、、、ふりかえっても、目に入るのは・・・

立派な体格の看護師さんと、カルテで膨れ上がった

カルテ棚

皆さん、カルテ庫をご存知か。患者さん一人に1冊カルテがつくられる。診療所といえどもその数は膨大にのぼる。それらは書庫に収められるのだが、何列にも並ぶ棚に収めらる。病院であってもそうだが、診療所ともなると限られたスペースに全てのカルテを収めるには、狭いスペースに何本もの棚が並ぶ。その棚と棚の狭間の向こうから、その声は聞こえてくるのだった・・・

「タスケテ・・・」

どこかから消え入りそうな声が・・・はっとしてカルテ棚の奥を覗き込んでみると、カルテ棚の向こう側に、壁との狭間に器用な形で畳み込まれるように、人影が横たわっていた

S事務長だ

また倒れてしまったらしい、よりによってこんな所に・・・すわ!と棚の奥へと、、、棚の間は人がひとり、やっと通れるくらいしかない。奥へとたどり着き、さらに45度に身体をひねり、その奥を覗き込むと、壁の狭間にぴったり挟み込まれ、身動き取れなくなっている

狭い

苦しい

そこから引き出すしかなそうなのだが、私一人の力ではとても引き出せそうにも無い。助けを求め看護師さんを呼ぶ・・・呼んだのだが
うちの診療所では一番スリムなS事務長。恰幅のいい私たちに囲まれ、、、挟まれるように存在するS事務長。なにも、こんなトコロにまで挟まれなくても・・・とても、その棚の隙間には1人以上は入れ込めないし、ウチの連中では一人であっても難しい。誰もたどり着けない。なんとか奥まで入れても、さらにその奥の隙間に体を入り込ませることのできる看護師は・・・

皆無

これじゃS事務長は、ぁあ、このまま干からびてその運命を天に任せるしかないのか・・・

山椒魚

私も挑戦したが。その狭いスペースに体を屈めてさらにその奥の棚と壁の隙間から大のオトナの男の人を引っ張りだそうにも、か弱い私にはそれができない。力のある恰幅のある者はというと、、、そこまでたどり着けない

逞しい看護師さんは奥へ入れない
小柄な私は奥へ入れても力が及ばない
スリムなS事務長はこのままでは命がない

「まったく忙しい時に!
よりよって、なんで
こんな面倒なところに・・・」

結局、S事務長を助け出せたのは、たまたま来ていた

か細い

O先生(♂)だった。皆さん!

肥満体的・・・大敵

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