episode 62
アタってクダる
ある晩の当直時のこと。激しい下痢をうったえて来院したTさんは55歳♂
「また、腹の調子が悪くて・・・」
だそうだが、激しいのはお腹だけじゃなくて、見るからに
禿げしい
なんでも昼過ぎから下痢が止まらないそうだ。明るい時から調子が悪いなら早めに来いよ・・・と思いつつも、こちらから聞いたわけでもないのに、1人でベラベラ症状をしゃべりまくる
「ワルイものを食べたからだ・・・」
昼に食べた山菜に怪しいものがあった。きっとアレに
間違いない!
だそうで、しきりに腹をさすりばがら、昨日山菜取りに○○まで行ってきたんだ・・・○○って知ってる?・・・穴場なんだよなー・・・で今日さっそく食べたんだけど・・・アク抜きが弱かったのかなー・・・ところで野球はどっち勝った?・・・延々と喋る喋る、 診察室に案内するタイミングを逸してしまった
当院へは、何度か、かかっているそうなので、カルテを探し出してきた。カルテを開いてみると、
先月
先週
3日前にも
時間外に来院。そして症状は・・・
下痢
僕もお腹が強いわけではないから、ちょっと同情もするのだが、それにしても
「あやしい魚をとってきた」
「なんかの酢の物を食べた」
「てんぷらが古かった」
「山菜だろう」
アタリまくり。うーむ、懲りないというか、何度も何度も、、、危ないモノを食べては、きっちり腹を下しているわけだからしょうがない
さて、Tさん。病院へは奥さんと一緒に来たとのこと。僕はTさんの姿しか見ていない。奥さんはどこに?外で車の中で待っているのか?点滴になるし時間がかかることを伝えねば・・・
いない
待合室にも、外にも、それらしい人はいない。懲りない食アタリに奥さんも愛想を尽かしたのかもね。病院までは送ってきてくれたけど帰ってしまったらしい
点滴が終わる頃に、Tさんは「一銭も持ってないんだー」「一人では帰れない」と言い出した。全く仕方がない
深夜に、いつまでも居ていただくわけにもいかない。僕が代わりに自宅へ電話をすることになった「迎えに来て欲しい」「所持金がない」旨を伝えたのだが
「・・・」
無言。返事をもらえない、何度も事情を伝えるも、無言。奥さんはだんまりを決め込んでいる。「Tさん、アンタいったい何しでかしたんだよー」
病院に泊まってもらうわけにもいかない。説得を試みる。やっと声を聞かせてもらう
「今風呂から上がったばかり、もう寝間着に着替えてしまったので行けない」
「もうそんな人知らないから」
「恥ずかしくて、恥ずかしくて、知らない」
だそうだ。ラチがあかないので、電話を本人にかわる
「カァチャン。迎えに来てくれよ〜」
「お金持ってないんだよ〜」
「ごめんよ〜」
泣き落とし
が効を奏したのか、迎えに来てもらえることになったらしい。点滴も終わり会計の前で妻の迎えを待つTさん。黙って向かい合ってるわけもいかないので、世間話を始めたのだが・・・この奥さん実は某病院の
看護師
だという。だったらコッチの事情だってわかるだろうに、ゴネたりしないですぐ迎えに来いよなー!まあ何度も怪しいものを食べてアタルTさんも悪いのだが、しかし看護師なら止めるんじゃないか普通。そこでちょっと気になった
「奥さんは(食あたり)大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。同じ物、食べてるんだけど・・・」
ふーん。まぁ
看護師は丈夫
だけれどね、でも?必ずTさんだけがアタル。そして料理はその
奥さんが作って・・・
あんた盛られてるゾ
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