episode 64

事務の一番長い日・・・ある受付員の一日(1)

どんよりと雲がたちこめ、雨が、いまにも霙に変わろうかという天気

今日は受付に立つ日だ。おかげで昨夜は寝付けなかった。戦場へ赴く兵士の心境はこのようなものか・・・頭が重く感じられ、空気が鈍重にのしかかってかくるかのようだ

ぅわ!

ドテ、ドテーン!!!と階段を踏み外してしまった。イテテ、、、思い切り向うずねを打ちつけた。これでなんとか眼はさめたが、ますます気が重くなるばかり・・・

戦場に到着

待ち合い室にはすでに十数人の患者が待ち構えている。いったい何時から来ているのだ・・・

向こうでニヤニヤ笑っているのはOさん86歳

「ヲ、何しに来た?」

おまえこそ何しに来たんだよ
「これから仕事ですよ、この制服姿でわかりません?」
「辞めたんじゃなかったのか、まだおったのかン?ン?」
・・・

無視

患者さんはOさんだけじゃない、他にも患者さんは一杯。気を取り直して挨拶だ

「おはようございます!」
「あぁ、おはよお」
「早いですね、皆さん」

「畑仕事して、6:30にはもうきてるわよ」

「兄ちゃん、TV。TVを早くつけてよ。○○放送、NHKじゃないよ」

「○○新聞もってきてくれー」

「お茶のコップないわよー」

テレビをつけて、新聞を出して、給茶器のコップをセットし、あっという間に受付開始5分前

「オイ、何時から受付だ!?」
「ハイ、8時15分からです。今しばらくお待ちくだ・・・」
「あ?何時??」
「もう少しお待ちください」
「え?何時からだー?」
「8時15分からです」

(「え?何時?」「8時15分からです」数回繰り返す)

この時点で1分前

「ワシャ6時から来てるんだ、先にしてくれてもいいだろ」
「申し訳ございません。順番に致しますのでしばらくお待ちください」
「なんでだ!早いもの順だろ!俺が一番だからいいだろー」
「みなさん受付機に並んでらっしゃいます。一緒にお並びくださ・・・」

受付機作動!

「あ?ワシャあんな機械使えんゾ。どうすりゃいいんだ?」
「わかりましたお時間になりましたし、こちらで受付いたします
診察券をお出しください」
「ぁ?診察券・・・診察券はっと、ココに入っているハズ。兄ちゃん見てくれヨ!」

ぼん、とカウンターに投げ出された保険証の束。輪ゴムできっちり留められたその束は、過去何年分もの保険証の束。ところどころスーパーか何かのレシートが飛び出している。輪ゴムをはずそうとすると・・・

ブチブチブチ・・・

輪ゴムは著しく劣化、一部は保険証にくっついてしまっている。いったいいつからとめられていたのか・・・

「あんちゃん、切っちゃダメだよ、新しいのに代えてくれ!」
「あ、はい。そのまえに保険証を確認させてもらい・・・」

全部期限切れ

「今日はどうされましたか?」
「来いと言うから来た、、、」
「はい、何科をご希望でしょうか」
「来いと言うから来た」
「来いと言うから来たんだ!来たんだ!!」(連呼)

カルテを確認。先週退院したばかり、主治医の先生は整形外科。なら今日整形外科受診か?入院時の記録を確認するために病棟に電話・・・

「え?Oさんの外来受診予定は再来週よ」

もう一度、気持ちを切り替えOさんにむかう

「Oさん、予約は今日じゃないですよ・・・」

「ナラ、風邪ひいた。早くしろ!」

気がつくと目の前にはジジババが集団でカウンターにかぶりつき、さかんにわめいている・・・

「アレ、アレしてよ」
「注射、注射、、、して」
「薬くれ、この前内科でもらった」

「受付さん、診察券つまったよー!」
「便所の水が流れないよー・・・」

「患者が薬が出てないと薬局から電話ー・・・」

ハイハイ、と受付カウンターから飛び出した僕

ゴン!

手押し車にハネられた、、、ババの脇見運転、話しながら2列で走るなよ!

僕の視界は真ブルーにそまり、その場に凍り付いた

セーフモード

に突入!

・・・ ま、今日は無事に何事もありませんでしたと

日誌には書いておこう


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