episode 71

星君、君は完璧な永遠のライバルでなくてはならない

あなたがかつて・・・
女の子だったなら
わからないことかもしれない

もし、アナタが
かつて・・・
男の子だったなら
きっとわかるだろう

こんな気持ち

そうだな年の頃なら
10代の
中学生の頃の

クラスの中にきっといる
元気な女の子
人気者で
いつも休み時間には
はしゃぎ回っている

活発な女の子が

授業中に教科書を立て
体を縮こまらせ
休み時間には決して見せないような
静かに自分の世界に固まって
ペンを走らせる姿
その手元にある

日記帳

そう鍵付きのやつだ
いつしか気になってしまった
その子の手元の日記帳

果たして何が
書かれているのか・・・
僕のことも
書かれているだろうか・・・

覗き込みたい衝動に

駆られたことが
きっとあるにちがいない・・・

その日の朝は思いの外患者も少なくて、余裕で受付に立っていました。インフルエンザの予防接種も一段落つき、襲い来るババ、ババ、ババ、、、をちぎってはなげ!ちぎってはなげ!ということなぞもなく、、、

中には、受付もせずに診察室で待つ方や、本当は整形外科に来たのに泌尿器科でお待ちの方、息子の診察券で受付してしまい、まだ呼ばれないとちょっと苦情を呈す方、診察室で薬は余っているからいらないとおっしゃりながらも、それでも、今日薬が出ていないのはナゼだとご相談なされる方、方、方、、、

それくらい全然!余裕でこなしていました。余裕があればそれだけ丁寧な対応も出来るというもの・・・決して、いつもは、忙しさのせいにして、手をぬいてるわけじゃありませんよ!

そして今日は月の最初の日です。心の中で、今日の日の、自分の目標を

『保険証確認強化デー』

としたのでした。なにせ、今日は受付開始して1時間たっても、大したトラブルもないじゃないですか!余裕ですよ!

「すみません保険証を確認させて頂きたいのですが」
「老人受給者証はおもちですか?」

と次から次へと、保険証の提示を求めていったのです。そんな僕の姿は患者さん達にもきっと伝わったのだと思います。誰一人として、とりたてて、不満そうにする方はありませんでした・・・

「もって来てないわよ!」
「めんどくさいわね!」
「変わってないわよ!」
「あとで、あとでみせるわよ!」

と、ちょっと語尾を荒げられる程度で・・・皆さん快く保険証を提示して頂けました。患者さんの反応がいいと、こちらもますますヤル気がヒートアップ・・・いえいえ、笑顔に、声に自信がみなぎってくるものです。そしてふと気が付くと

エネルギー充填120%

の微笑みで、僕が対峙したのは、強敵のYさん79歳。いつも「ホホホ!!!」という、亀仙人なみのトボケた笑顔で僕らを煙にまく、魔女!。彼女に保険証の提示を求めていたのです・・・

「保険証を確認させてくださ・・・」
「あ、持ってるよ。コレね」

と何が入ってるか解らない、例のカバンのなかから、一発で保険証を取り出すYさん。まずは幸先のよいポイントを勝ち取りました

「老人受給者証はおもちですか?」
「あ、老人の保険証ね・・・」

お、これもクリアーか!と思いつつも、Yさんはカバンの中をゴソゴソ、ゴソゴソと、かきまわし、次から次へと、中味をカウンターの上に並べ始めました。おなじみのティッシュでつつんだ御菓子。輪ゴムで束ねた数件の病院の診察券。広告の裏に書き付けた住所録、、、そして、そこに現れたのが、一冊のノートです

A5サイズで、厚さはタバコぐらいの、そのノートは、角がすり切れ、表紙は何種類かの飲み物のシミで色を増し、またその水分でふやけ膨らみもしている・・・
そのノートを手にしたYさんは、ペラペラとページをめくり始めました

僕は、決してその中味を覗き込もうとしたわけではないのですよ。老人受給者証が、どのあたりから出てくるのかと、はやる気持ちをおさえつつも、Yさんの後ろに並ぶ数人の患者さんの姿も気になって、どのページからそれが出てくるか、正直焦る気持ちでもいたのでしたが・・・

ふと気付いたのです。各ページの右上に「13年5月23日」とか「14年9月1日」とか「15年3月4日」とか日付が入っていることを・・・

「あれ?Yさん。それ日記帳ですか?」
「あ?え、そうなんじゃ
毎日の会った人や、面白かったことや、そうそう・・・

病院に行った時のことも書いておくのよ

ホホホ、ホホホ・・・」

彼女の日記のなかに
僕ら病院職員は
どう書かれているのだろう

事務員の姿は
書かれているのだろうか
果たして僕のことは
書かれているのだろうか・・・

ひょっとして、ライバル出現かぁー!

あぁ、彼女の日記帳。覗いてみたい


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