episode 74You only repay twice今、保険証を取ってくる・・・の言葉を受けて、先程から待っている。午後の時間ずっと待っている。やがて日はとっぷりと暮れ、蛍光灯の光が外の地面にもれ始めた 2時過ぎに、腰が痛いと来院したSさん(82歳♀)。今日は保険証を持ってこなかった。ほぼ2年ぶりの来院。保険証の確認が出来ないので本日は自費にて計算。老人保険で国保のSさん、保険が変わっている事もないはずだが・・・さすがに2年ぶりでは以前確認した保険で計算するわけにはいかない Sさんは病院のごく近くに住んでいる。2年前まではよく来ていた常連の一人。今朝、受付で久しぶりにみかけた懐かしい顔に、私は、つい気が引けた。自費で全額支払って貰うことに・・・ 「Sさん、今日の会計は保留しましょうか?薬は持っていってもらっていいですよ。明日でも保険証を持ってきて下さい。その時に会計させてもらいます」 と伝えたのだった。しかし相変わらず気丈なSさんは 「家、近いから今から取ってくる」即答。Sさんの顔は、2年前と変わる事のない笑顔、いくらか増えた顔面を刻む皺の数に、より 愛らしさを感じもした。くしゃくしゃの満面の笑顔、本人の一番の笑顔、久しぶりに会ったが依然と全く変わらない患者さんの笑顔。よく受付で・・・ 喧喧諤諤言い合ったものだ、、、あ!あのSさんのままだった。思い起こしていた私が目にしたのは・・・なぜか待合室で知りあいらしい誰かと、一心不乱に 大声で話し込んでいるSさんの姿。保険証を取りに行くと、受付を後にして15分後のことである。あれ?保険証を取りに帰ったんじゃ・・・思わず声をかけようとした刹那。お互いの視線が絡みつくように交差した。アイコンタクトで要件を伝え合う2人、久しぶりとはいえ常連ならではのやりとりである。余計な言葉は要らないのだ。案の定、状況を理解したSさんは、やおら立ち上がり、痛む腰を庇うかのように・・・ 軽快な足取りで外へ姿を消した。とりあえずホッとしたが、、、保険証の事、会計が済んでいない事、薬も持って行かなかったこと、忘れているんじゃないかという予感も捨て去れぬ そして2時間、4時間、、、今ではもうあたりはすっかり暗くなった午後6時になってもまだ来ない。忘れてるんだろうな・・・やっぱり。家へ電話することにした。耳の遠いSさんの事を考えると受話器を取る手が、思わず躊躇してしまう。1回、2回、3回、、、呼び出し音を耳に聞きながら、受話器を持つ手が汗ばんでくる・・・ ガチャリ幸い電話を取ったのはジジ。ババにかわってもらう。やはり耳が遠い・・・電話の向こうで大声で呼ばわるジジの声が何度も、何度も、叫んでいる。やがて訪れる静寂 10秒、30秒、3分・・・3分? 「もしもし、もしもーし!!ヲーイ!」 呼べども返事が帰ってくる事もなく。今やぐしょりと汗ばんだ受話器を握りしめ、赤くなるくらいに耳に押し付ける私、その耳に突然と響く ガチャン!ツーツーツー・・・切られた。いきなり切られました。ええ、いつものことですから、驚くこともありません。すなわち、切った誰かが電話の近くにいるということ。速攻でリダイヤル 「もしもし、Sさーん」 本人が切ったらしい。早速要件に入る 「保険証は?どうされました」 「なに?なに?誰?」全くおぼえていないらしい、ていうか話を聞いてない、聞こえてなかったんだな。それでも時間を惜しまず、ゆっくりと今朝のことを伝えると・・・ 耳が遠いものにナニ言っても無駄と笑われる。話にならないので、再びジジに代わって貰った。ジジに午前中の出来事を伝え、保険証持ってきてくださいと伝えた・・・ 5分後の世界家は近いのだった。慌ててジジが来院。申し訳ない、アレは何も云わないので、、、そうか保険証を持って行かなかったんだな、迷惑をかけた、済まなかったねー、ほう薬も持って行かなんだか・・・ホレ保険証を持ってきた 薬を渡し、1割で計算し料金を請求すると・・・ あん?財布持って来いと言わなかったろう
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